コンクリート構造物保全のための表面含浸材を超音波加振を併用して
浸透圧入する方法


これからはストックされている社会資本の維持管理技術が重要になる時代です

 2005年には人口減少が始まり、今や、日本は完全に高度経済成長期から安定成長期に入って西欧社会と同じような成熟社会に入りました。当然、今後一層高齢化社会は急速に進展し、社会資本への投資余力の減退は顕著になってきます。これまでは最大でGDPの約16%という膨大な建設投資が行われてきましたが、近い将来にはアメリカ・ドイツ並みの78%台になることが予想されます(イギリス、フランスでは4%台)。つまり、GDPは当面は年間約500兆円で推移するでしょうから、現在10%で約50兆円の建設投資が40兆円にまで減少するのも時間の問題ということになります。
 これからの建設投資は、主として都市の活性化のためにインフラが整備されている既存都市の再開発を主体にした新規投資以外にはほとんどなくなり、1980年代からの高度経済成長の波に乗って整備された膨大な量の社会資本の維持管理に対する投資が非常に多くの割合を占めると思われます。欧米ではすでに維持管理が占める建設投資額が全体の50%弱に達しているという報告もあり、日本の25%前後は今後の急速に増加して現在の2倍になることが予想されます。



コンクリート構造物の保全には表面被覆工や表面含浸工が欠かせません

 コンクリートは、コンクリートを打設するときの流動性を付与するために水和反応に必要な水量(水セメント比で27%前後)の2倍以上の水量が混入されています。余分な水は、その一部はコンクリートが固まる前にブリージング水などで逸出しますが、かなりの量の水が余剰水としてコンクリートの中に残存し、コンクリートが硬化してから蒸発し、コンクリート中に空隙を残します。つまり、ポーラスなコンクリートが出来上がります。この空隙を通して容易に空気中の二酸化炭素やSOx、NOx等の有害物質がコンクリート内に進入してコンクリートを劣化させます。
 コンクリートの早期劣化現象の主な原因はこのようなポーラスなコンクリートの製造にありますので、このようなコンクリート構造物の早期劣化現象に対応するためには劣化因子を遮断する「表面被覆工」が最も効果的な工法の一つです。この工法は土木学会により次のように区分されています。
  • 有機系被覆工   塗装工法、シート工法
  • 無機系被覆工   単層塗装工法、複層塗装工法、メッシュ工法
  • 表面含浸工     シラン系表面含浸工、珪酸リチウム系表面含浸工、珪酸ナトリウム系表面含浸工
  • 断面修復工     左官工法、吹付工法、充填工法


超音波加振を併用した浸透圧入による画期的な含浸効果が得られます

  液体の浸透理論では、毛管内を流れる液体の浸透(流動)距離は毛管半径、液体の表面張力、液体と毛管壁の間にできる接触角のコサインのそれぞれ平方根に比例し、液体の粘度の平方根に反比例し、浸透経過時間の平方根に比例するとされています。さらに、水系の含浸材については空洞部における蒸気の拡散輸送や空洞面における表面拡散現象が同時に起こっているといわれています。したがって、表面含浸工では表面含浸材をコンクリート表層部へ十分に浸透させるために、液体の粘性を小さくし、ゾル状態を適度に保つなどの工夫がなされています。
 この提案は、このような浸透性向上のための表面含浸材に対する工夫に加えて、次の方法を付加します。

  • 表面含浸材の粘性を低下させるために、超音波加振を併用して表面含浸材を塗布す
  • 浸透現象を促進するために、加圧しながら表面含浸材を塗布する。

 従来の表面含浸工は刷毛塗り、ローラー刷毛塗り、吹付け、噴霧等によってコンクリート表層部に表面含浸剤を浸透させています。このために、コンクリート組織が緻密であったり、表層部の細孔内に水分を含む場合には十分な含浸深さを確保することが容易ではありません。
 そこで、付加的な処置として超音波加振により浸透性を向上させるために加圧されている含浸材の粘性を低下させて、効率的に含浸材がコンクリート中の細孔を通して内部に浸透することを促します。この含浸効果は塗膜による表面被覆工に対しても同様に得られますので、塗膜とコンクリート下地との付着力も大きくなることが期待できます。



超音波加振を併用した浸透圧入装置 

 次に述べる「浸透圧入装置」を考案しました。
  • 浸透圧入装置は、浸透圧入器、表面含浸材圧送装置、圧気空気供給装置(コンプレッサー)で構成される
  • 浸透圧入器は、加圧された表面含浸材を塗布面に行き渡らせるために12mmの間隙を塗布面との間に有しており、その外周にはここに圧入された表面含浸材が漏出しないように漏洩防止材が取り巻いている。
  • 上記漏出防止材の外側には0.51cm程度の間隔を取って同じように圧縮空気漏洩防止材が取り付けられており、この間隙に表面含浸材の圧力と同程度の圧力の圧縮空気を送り込んで加圧されている表面含浸材の漏出を防止する。
  • 浸透圧入器に表面含浸材と圧縮空気を送り込んで表面含浸材を先端圧入機の前面に行き渡らせた状態で、浸透圧入器の内面に取り付けられた超音波加振子を稼動させる
  • 超音波加振子による振動は浸透圧入器内に満たされた液体状の表面含浸材を介してコンクリート表層部の表面含浸材に効率よく伝達され、含浸浸透を促進する。
  • 超音波加振子は表面含浸材に直接接触するように浸透圧入器の内面に配置して、浸透圧入器が塗布面を移動するときに上記の12mmの隙間に溜まっている表面含浸材を通して平均して加振されるようにする(超音波発振子の形状は矩形、円形、ドーナツ形等があり、千鳥状に配置するなどして浸透圧入器がスライドする過程において全体を効率よく加振できるようにする) 

浸透圧入装置を使用した施工手順

  1. 浸透塗布面の異物を除去し、圧入した表面含浸材の漏出を少なくするように表面の凹凸をなくす。
  2. 浸透圧入器を所定位置にセットして超音波加振子を稼動させる。
  3. 浸透圧入器を塗布面に押し付けてから圧縮空気を送り、その後で表面含浸材を送る。
  4. 浸透圧入器を塗布面に押し付けながら十分な浸透ができるように所定の速度で移動させる。

期待される改善効果 

 次の改善効果が期待できます。
  • 超音波加振による表面含浸材の粘性低下で浸透効果が向上し、良質の表層保護層を作る。
  • 表面含浸材の圧入により浸透効果が向上し、良質の表層保護層を作る。
  • 表面含浸材を圧入する圧力と漏出防止のための空気圧をバランスさせることで、少ない材料ロスで表面含浸工を施工できる。
  • 連続的に塗布作業ができるので、浸透深さの大きい表面含浸工が迅速に施工できる。
        




        
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